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今月紹介する本~3月~

今月紹介する本

【<弱さ>を<強み>に】を読んで

キーワード:介助者と関係性を創る

 

『僕は24時間、365日介助が必要な重度の身体障がいがあります。日常生活すべてが「全介助」である障がい者にとって、介助者とは非常に大きく重要な存在です。彼らは単なる日常生活の支援者ではなく、当事者が社会参加し、夢を追求しながら生きていくための支援者でもあるからです。

当事者と介助者に、上下関係はありません。当事者は自分の人生を支えてもらえるよう、一生懸命、介助者を育てます。長期間にかかわってくれる、よりよい介助者に囲まれることで、当事者みずからの人生はいっそう充実したものになります。また、責任を持って自分の手で人を育てるということは、受け身であった障がい者が主体的に動き出すきっかけとなり、それは大きなやりがいにも繋がるのです。

介助者は、当事者の人生をいっしょにデザインしていくパートナーともいえます。互いに尊重しあい、切磋琢磨していく関係です。PA(パーソナルアシスタント)の研究をおこなう岡部耕典氏は、PAの「専門性」について「一般的な知識や操作的な対処の技法を学ぶことで」身につくものではなく、「個別の当事者との「ともに生きる」時間を共有した歴史を踏まえ、日常生活と不可分の当事者の自己決定を支えかつその決定の結果に対して共同で責任を持つことにより、その当事者との個別の関係性のなかで形作られ獲得されるもの」と説明しています。

だから僕は、「ともに創り上げていく」という介助者との関係性にプラスの価値を置いています。

なぜなら、障がい当事者は、みずからが中心になって介助者を動かし、実現したい目標に向かって前向きになることができるからです。単なる手足論としてではなく、介助者を同志とみなして、ともに何かをつくっていく関係性は、当事者一人ではできないことでも、もっと何かできるかもしれないという可能性が開けていくイメージを持てるのです。一方で介助者も、黒衣として指示通りに動くだけではなく、自分で考えて動けること、まかせてもらえることは、介助に責任とやりがいを生み出し、高いモチベーションで仕事をすることができるのです。』

著者:<弱さ>を<強み>に 編著:天畠大輔

 

 今回紹介する本は、天畠大輔氏の「<弱さ>を<強み>に(岩波新書)」です。

現場で支援されている皆さんは、利用者の方を大切に扱い、尊重し認め合い、ニーズに合わせた支援を様々な工夫を用いて行なっていると思います。しかしながら、重度の障がいがあり、発語困難な利用者の皆様にとって、本当にその方の思いや願いに寄り添えているのか…確かめる方法は難しいですよね。当事者主体…利用者主体などの言葉をよく使うことがあります。「介助者は障害者が「やってほしい」ことだけをやる…言葉を受けて行動する…障害者が主体なのであるから、介助者は勝手な判断を働かせてはならない…という『手足論』だけでは特に重度の障がいのある方の生活は成り立たないと個人の意見としては思っています。天畠氏が言われているような互いの関係性のなかで一緒に創り上げていくプロセスこそ、この仕事の醍醐味であり、やりがいを感じられる場面だと思います。身体介助というスキル以上にコミュニケート(コミュニケーション)できる支援者を目指したいと感じさせられた本でした。

スタッフの皆さんに、これからの支援のあり方について考えていただくきっかけになればと思い、この本を紹介させていただきました。

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