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今月紹介する本~7月~

今月紹介する本

【介護するからだ】を読んで

キーワード:体感した時間構造をスケッチする

 

相手のやっている動作に合わせて擬音語・擬態語を唱える。このやり方には、抵抗を持つ人もいるかもしれない。

わたしたちは赤ちゃんや小さな子どもと接するときに、「はい、ぽーんぽん」「もぐもぐできたねー」などと、動詞の代わりに擬音語・擬態語をしばし使う。

こういうことばづかいをお年寄りに向かってするのは、まるで子ども扱いしているようで失礼ではないか。

たしかに、相手のやっていることにおかまいなしに、幼稚なことばで接するのだとすれば問題かもしれない。

けれど擬音語・擬態語には、単なる子ども扱いとして片づけることのできない重要な性質がある。これらのことばが持っている、動作の描写力だ。

擬音語・擬態語にはいくつかおもしろい特徴がある。

まず、「ごくん→ごっくん」「ぽんぽん→ぽーんぽーん」にように促音便、擬音便、長音を挟むことができ、しかもその長さを動作の様子に合わせて自在に伸び縮みさせることができる。

短く弾むなら「ぽんぽん」、少し弾んで「ぽーんぽーん」、高く弾むと「ぽーーんぽーーん」。

こうした特徴は、それぞれの動作の時間構造をあらわすのに適している。

さらに擬音語・擬態語は、いくら繰り返しても不自然ではない。動作の回数だけ「ぽんぽんぽんぽん」と言い続けてもかまわない。

日常会話のなかでは、「ぽんぽん弾む」「てくてく歩く」と、目の前に当の動作がなくとも形式的に使うことができる。しかし、いざ実際の動作を目の前にし、それに合わせて声を発しようとするや否や、声は「ぽーーんぽん」「てっく、てっく」と現象や動作の時間構造に沿うようになる。

グループホームの介護スタッフは、自分の体を動かしたり相手の体を表現するときには、しばしば擬音語・擬態語を使う。

「もわーっと立ち上がる」

「ぐうううっと力を入れる」

「じいいっと見る」

観察巧者の介護者が使う擬音語・擬態語は、いわば観察された動作、体感された動作の時間構造をスケッチしたものだと言ってもいいかもしれない。

擬音語・擬態語は、単に介護者がお年寄りに望む動作を一方的にあらわしているだけではない。

擬音語・擬態語の促音や長音、そして繰り返しに挟まれた合間は、お年寄りからの変更を受け容れる間合いをうまくつくっているらしいのである。

 

著者:介護するからだ 編著:細馬宏通

 

 今回紹介する本は、細馬宏通氏の介護するからだ(医学書院)」です。

この本の中では、高齢者のグループホームの実際のエピソードを人間行動学者の著者が観察分析した内容が書かれていて、何気ないちょっとした仕草や行為を言語化されていてとても現場スタッフには共感する部分が多いと感じた本です。

その中でも『「よいしょ」の謎』の分析は、面白かった。あるスタッフは「よいっ」と言いながら持ち上げて、「しょ」で下ろしたり、別のスタッフは、「よいっ」で腰を沈めて「しょ」で持ち上げたり…また一人介助と二人介助でも違い…誰かとおこなうときは、いきなり「よい」で動作を始めることはなく、たいてい「いくで、せーの」というイントロが入り…またこのイントロにも言い方によって動作が変わってくるという、「よいしょ」に伴う動作のタイミングが人によって微妙に違うことが謎の一つ。

かけ声をただ一人の人間が自分に気合を入れるためと考えるとそれほど深く考えることはないかもしれない。でも、かけ声を「他人とやりとりするための道具」だと考えると、その構造はとても興味深いものだと感じさせられた本だと感じたので紹介させていただきました。

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