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今月紹介する本~10月~

今月紹介する本

【認知症世界の歩き方】を読んで

キーワード:ひとくくりにしない

 

「本人がお風呂に入るのを嫌がって…」。介護をされる方から、よくお聞きする話です。見方によっては「介護への抵抗」と感じられる、その人の「お風呂に入りたくない理由」」は1つではなく、実はその背景には、さまざまな認知機能のトラブルがあると考えられます。

 

たとえば、

1.温度感覚のトラブルで、お湯が極度に熱く感じる

2.皮膚感覚のトラブルで、お湯をぬるっと不快に感じる

3.空間認識や身体機能のトラブルで、服の着脱が困難

4.時間認識や記憶のトラブルで、入浴したばかりだと思っている

 

単純に、家族に手間をかけさせたくないと思っている、という場合もあるでしょう。

このように、お風呂という1つのシーンをとっても、その人が抱える心身機能障害(心と身体の不調・トラブル・誤作動)や生活習慣・住環境によって、なぜ・どんなことに困難を感じるのかは異なるのです。

つまり、認知症を「ひとくくりに」にしない。それが、とても大切なことです。

 

認知症は「今のところ」は、医学的に治す方法はない、という事実があります。

しかし、「本人の視点」から認知症を学び、生活の困りごとの背景にある理由を知ることで、その困りごと自体が発生しない、ということも起こり得ます。解決する困りごともあるでしょう。

「病:を診て「症状」に対処する医療・介護視点のアプローチではなく、「人」を見て「生活」をともにつくり直す。そんな視点からできるアプローチもあるはずです。

著書:認知症世界の歩き方 著者:寛裕介一より引用

 

 今回紹介する本は、寛裕介氏の『認知症の世界の歩き方(㈱ライツ社)』です。

この本は、認知症当事者へのインタビューを元につくられた「本人の視点」で認知症を知ることができる本です。

 認知症のある方が経験する出来事を「旅のスケッチ」と「旅行記」にまとめて、誰もがわかりやすく身近に感じ、楽しみながら読むことが出来ます。

 乗っていると記憶をどんどん失ってしまう「ミステリーバス」、人の顔を識別できなくなる「顔無し族の村」、会計までにいくつものハードルがある「カイケイの壁」、あっ!という間に時間が経つ「トキシラズ宮殿」、腕の進む方向を見失う「服ノ袖トンネル」…。

 ご本人の頭の中では、どんな風に見えていて、何に困っているのか、だれもがわかりやすく、身近に感じながら、そして楽しみながら学ぶことができるとても斬新な本なので、興味のある方は、是非読んでみてください。

 

 また、今回紹介させていただいた認知症当事者の方からの経験談をまとめた『認知症世界』の本とは異なりますが、重症心身障害のある方々のことをより深く知るために、まずは、その方たちがどんな世界に住んで、どんな世界を見て、どんなふうに暮らしにくさを感じているのかを自分のことのように「想像する」ことを通じて、暮らしの大変さや素晴らしさを共感できる介護を目指したい、そんな思いで作られた本も合わせて紹介させていただきます。

 日常生活でごく普通の介助の際に求められる配慮や課題についてあらためて気づくことがあったり感じるきっかけになれば幸いです。

 

重症心身障がい児・者の方々への介護入門 (sasaeru.or.jp)

著者:岸本眞 

発行:社会福祉法人大阪重症心身障害児者を支える会

http://www.sasaeru.or.jp/zyuushinn_kaigonyuumonn.html

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