今月紹介する本~2月~
今月紹介する本
【成熟スイッチ】を読んで
この年になっても私は、大昔に勤めていた小さな広告代理店でのことを夜中に思い出しては、「ああ、恥ずかしい」と冷や汗が出てくることがあります。よくぞあんなダメ人間を会社は置いてくれていたなあと感謝するしかないのですが、それがわかるほどには成長したのでしょう。
自分がやるべきことを教えられ、それに真面目に取り組まなければ物事は進んでいかない。毎日毎日が修業のような勤め仕事をして身につけた基礎仕事力は、その後の人生の中でも、とても大きな拠り所となります。作家でも、会社員の経験がある人はとても多い。個性とは、基礎仕事力の上に花開く能力でもあるからです。
また、仕事をするということは、いやなことがあっても耐え、自分を抑え、たとえ大嫌いな人とも折り合っていかなければならないということ。理不尽なことだっていっぱいある。だからこそ何よりも人を成長させ、人間力を鍛えてくれるのは、仕事なんです。
よく「子育てで、自分が成長した」という人がいますが、その言い方が私は大嫌いです。よっぽどの例外を除いて、親は子どもを愛しているし、子どもは親を愛してくれる。そんな相思相愛の関係で自分が成長したというのは少し恥ずかしいことだと思います。
たしかに、子育てというのは、自分がせいいっぱい愛している相手が、自分をどんどん裏切っていく驚きの連続でもある。時折、悲しくなったり、無力感も感じるけれど、それもまたいろいろなことを教えてくれる。子育てでの挫折や苦労は結局、家族の内輪話でしかありません。
逆に、仕事をしている人は「自分は真面目に働いているんだ」という事実に、無条件にもっと自信を持っていい。私は心からそう思います。
成熟とは、「昨日のままの自分だと、少しつまらないよ」ということでもあると思います。少しずつでいいから、変わっていくということ。
ちょっとしたことでいいから何か新しいことをして、昨日とは少し違った自分になってみる。成熟にはキリがありません。毎日新しいスイッチを入れながら、自分の変化を楽しむことが出来たら、なんて素敵な人生でしょう。
著書:成熟スイッチ 著者:林真理子 より引用
今回は、林真理子さんの著書「成熟スイッチ」を紹介させていただきました。
「年齢を重ねたからといって自然と成熟するわけではなく、小さな変化の積み重ねで人生が大きく変わる」「生活するにはお金が必要だから働かなければならないのであれば、嫌々働くのではなく、今の仕事を出来るだけ面白がれるよう自分の気持ちを持っていくことも大切だ」と筆者が延べています。他にも、よりよく年を重ねるヒントがいっぱいの本書。
昨日とは違う自分になりたい人は是非読んでみてはいかがでしょうか。