今月紹介する本~6月~
今月紹介する本
【ウムウェルトの知恵の輪】を読んで
今、ここでしか聞こえない声
大阪重症心身障害児者を支える会の三田康平理事長は、仲間たちとお会いするたびに、重障児者の人たちへの支援に求められる一番大切なことについてこんな話をしてくださいます。
支援者として長く関われば関わるほど、知らないうちに私たちは自分の側からの一方的な「私はそう思うからそうしてあげたい」という思い込みになりがちな支援になる危険がいつもある。でもそれはほんとうの意味での支援じゃない。
言葉を使わないで語りかけてくるあなたの声は、毎日の淡々と積み重ね続けていくひとつひとつの介助の中でしか聞こえないんですよね。
あなたのそばに近づいて声をかけ、あなたに触れて待ち、そこから始まるいつも繰り返される介助のすべての行為を通じて、あなたの今そのときの思いはどこにどんなふうにあるのかを「聞く」こと。あなたの声はそんな介助の最中の関係の中でしか聞こえない。でもそうすることでなら確かに聞こえてくる声が、だんだんはっきりと聞き取れるようになってくる。
あなたがここにこうしていて、私に語りかけてくる言葉にしない声が聞こえるってことこそが、あなたが支援者の私にプレゼントをくれるやりがいというご褒美なんだ。そんな関係性が生まれる体験を通じてはじめて私は、「ひとりの漏れもなく幸せであってほしい」と、自分の役目をかけてつぶやくことができる。
ひとりの漏れもあってはならない重障児者のご家族は、そうやってそんな日常を繰り返して積み重ねてこられてきているからこそ、我が子のその声は当たり前に聞こえておられる。その聞き取れる声は決して関わるものの一方的な思い込みなんかじゃない。
そうやって今ここでしか聞こえない言葉じゃない声に耳を傾けることこそが、その先にあるべき重障児者の人たちの権利擁護を保障することに繋がっていくんだ。私たちはそうやって重症児者の人たちを支えたいと願える支援者という職業人になっていくんだよと。
著書:ウムウェルトの知恵の輪(アクトハウス・ブックス)
著者:岸本眞より引用
今回は、岸本眞さんの著書「ウムウェルトの知恵の輪」を紹介させていただきます。
この本は、「重症心身障害児者の方々への介護入門~鏡の向こう側にいるあなたと~」の続編となる本で、ハウツー本や専門書ではなく、地域支援者の方や医療従事者、教育者や行政の担当の方、地域ボランティアも含めたたくさんの支援者に向けて、エールを贈りたいという思いで書かれている本です。時々、慣れない言葉も出てきますが、わかりやすく例え話を交えて説明してくれているので、それぞれの現場で重障児者との関わりがある方は、共感できる部分が多く、関わる上での大切な気づきだけでなく、明日からも頑張ろうと勇気をもらえる本だと思います。
昨今の厳しい状況の中で、なんとか踏ん張って、利用者の皆さんを支え続けている地域支援者、医療従事者、行政関係者など重障児者の方々と何らかの形で携わっている方は、是非読んでいただきたい本です。
購入方法は、下記のブログにて。
ウムウェルトの知恵の輪(ブログ)
http://blog.livedoor.jp/lupinx/archives/52231989.html